ある神話(2000年頃)

(これは昔翻訳した本の著者<ジョセフ・マーフィー博士>がどこかで書かれていた寓話です)

プロメテウスによって火を与えられた人類に、更なる素晴らしいプレゼントが贈られることになった。
それは「真理」である。
貴重な贈り物は、大きな鏡の形をしていた。人がこれを覗き込み、全身を写しだすと、宇宙の森羅万象を貫く原理や法則、善や美の実体がたちどころに理解できるのである。
ある若い神が、この栄えある使者として選ばれ、人類の暮らす地上に遣わされた。天から人類の待つ地につながる階段が現れた。その若い神は「真理」の鏡が入った木箱を大事に携え、階段を降りていった。
だが、いよいよ地上に降り立とうとしたその瞬間、この人類への贈り物を快く思わなかった大神ゼウスが邪魔をした。突然つむじ風が起こり、若い神を直撃した。不意を打たれたその若い神は、木箱を地上に落としてしまったのだ。
「真理」の鏡はこなごなに砕け、無数の細かい破片となって、世界中に飛び散った。
その若い神と、天からこの事件を目撃したプロメテウスら人間に好意を持つ神々は、今後未来永劫人類を見舞うことになるであろう災厄に思いを馳せ、顔色を失い、悄然とうなだれた。
古今東西、大勢の人が「真理」の破片を入手し、狂喜した。
そして、自分や自分の仲間が手に入れた「真理」の破片以外を「真理」と呼ぶ冒涜者は厳しく罰せられなければならないと考えた。
このようにして人類は、「正義」の名のもとでお互いに争う宿命を背負ったのだった。

雑感

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