孤立無援の思想(1990年代)

昔、あるところに貧乏な天文学者がいた。寒い時も暑い時も毎晩おなかをすかせながら近くの丘にのぼって星を観察していた。
 ふもとの裕福な家に飼われていた犬は、ぬくぬくと何不自由なく暮らしていた。実際この貧乏な学者よりよほど贅沢な食べ物をたらふく食べていた。犬は、いつもひもじそうに丘にのぼっていく変わり者をたいそうばかにし、やせた若者が家の前を通るたびに、いつも吼えついていた。
 犬には判らなかった。この若者が澄んだ大空をじっと見つめている時いつも味わっている何物にも代え難い充実感を。

雑感

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